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Category: こばなし

夏祭り(晃あん)

2016.9.4 ブリデ4の無配
軽音部と夏祭りの晃あん

夏祭り(颯あん)

2016.9.4 ブリデ4の無配
颯馬とアドニスとあんずで夏祭り

サマーキャンプの夜(晃あん)

ツイッターで書くお題を決めてもらうという他力本願プレイの2個目あんスタ。
投票では恋戦記がいちばん多かったのですが、全部書いてみようと思っています。残りはめいこいとコドリアです。

この話は投票やる前から書いてたのですが、夏中かけても全然終わらず、ようやく書けたので、これ用にしてしまいました。ずる。申し訳ない!


サマキャンで、晃牙→あんずの恋愛未満こばなし

前夜

ツイッターで書くお題を決めてもらうという他力本願プレイをさせてもらいました。
投票してくださったみなさまありがとうございました!

既視感ありありは大目に見ていただけると嬉しいです。
同じタイトルの師匠と晏而の話を書いたのは覚えていますが、今回は孔花です。

七夕

「なにしてるの?」
 孔明が、花の肩越しに、その手元を覗き込む。
「たなばたの短冊です」
 花は、色紙の代わりに、薄い竹簡をいくつも束ねていた。
 これを軍のみんなに配って、笹に飾るつもりだ。紙はないが、成都はすばらしいことに笹が豊富にある。
「たなばたのたんざく……」
「これに願いごとを書くんです」
 孔明が戸惑いの呟きをすると、花は端的に説明してくれた。
 おそらく、色々いわれがあるのだろうが、端折られてしまった。
 それはまた後で聞こうと思う。
「師匠も、はい。書いておいてくださいね。私、みんなに配ってきます」
 花は孔明に竹簡を一つ渡すと、ぱたぱたと部屋を出て行った。
 花の国は、本当に催しもの好きだ。
 孔明はくすりと笑って、自分の席に着いた。
 願い事は叶っている。
 これ以上に、何を願うというだろう。
 けれど、何か書かないと、花ががっかりするだろう。
 孔明は、筆を取って、しばし悩んでから、さらさらと書き始めた。

 中庭に、花が集めてきた「短冊」が飾られた笹が立てられていた。
 短冊の重さで笹がしなって、なかなか風情のある様だ。
「師匠は何て書いたんですか?」
 飾りつけを終えた花は、わくわくしたように、孔明を振り返る。
「秘密」
「いいです。探しますから」
 当然、孔明が回答を拒否すると、花は頬を膨らませて、笹に向き直った。
「じゃあ、ボクは君のを見ようっと」
 花が予想通りの反応をしてくれたため、孔明も花の短冊を探す権利を得られた。
「あ、駄目です。秘密です」
 花は慌てて、孔明の視界を塞ぐように、目の前で手をひらひらさせる。
「おあいこだろ。よろしくね、花」
 孔明は花の手を払って、にっこりと笑った。
 すでに花の短冊は見つけている。
 いちばんぎこちない手跡の短冊。
 願い事は、「ふたりでずっと一緒にいられますように」。
 花らしい、素直な願いだ。
 それを、こちらの言葉で書いてくれていて、そのことが嬉しかった。
「私も見つけました」
 花も、孔明の短冊を見つけた。ほんの少し、花の声が震えている。
「うん。よろしく頼むよ」
 孔明はもう一度、花に頼んだ。
 孔明の願いは、「花が健康でありますように」。
 ずっと健やかでいてくれたら、それに勝るものはない。
 花が苦しんだり、痛がったりするのは嫌だ。
「私、書き直します」
 花は自分の短冊に手をかける。
「なんで?」
「私も、師匠にはずっと元気でいてほしいです」
 花はなんだか泣き出しそうだ。
 孔明は少し考える。
「君の願いごとが叶ったら、それはボクがずっと元気でいるってことじゃない?」
 花の願いを書き直す必要はない。
 ずっと一緒にいたいのは、孔明も一緒だ。
「……はい、そうですね」
 孔明の言葉に、花はわずかに目を見開いて、そして納得したように頷いた。
「ふたりで元気に仲良く暮らしましょう!」
「うん」
 笹が風に揺れて、さらさらときれいな音を立てている。
 振り仰げば、空に、たくさんの星が輝いていた。
「さてと。仕事の続きしないとね」
「はい」
 孔明はひとつ大きく伸びをした。まだ仕事が残っていることだけが残念でならない。
「七夕はなにか食べないの?」
「はあ。七夕はこれといったものはないですね」
「へえ、珍しいね」
 二人は話しながら部屋の中に戻っていく。

 何でもない会話。
 何でもない毎日。
 そんなものの積み重ねが、「ずっと」を作るのだろう。


おわり

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