サンプル:廻る夜に降る星の香は(恋戦記魁・本巴)
2017.11.5 ラヴ♥コレクション2017 in Autumn にて発行
だが、もちろん、孟卓は、公路の不満などとりあわず、以前と同じように笑ってお茶を飲んだ。
「心に余裕を持った方がいいぞ、公路。おなごにもてん」
「不要です!」
「おまえだって、公路みたいにいつもカリカリしてる奴はごめんだろう?」
不意に、孟卓に水を向けられて、巴はぎくりとする。
(な、なんて質問を……!)
そうですね、などと口が裂けても言えない。
公路は今にも銃弾を撃ち込みそうな目で、巴を睨むように見ている。下手なことを言ったら、その目から弾が発射されそうだ。
異世界に来て、争いの最中で死ぬなら劇的で――もちろん死ぬのは嫌だが――少しはこの世界に来た意味もあったような気もするが、こんなのどかな庭の片隅で、失言によってなど死にたくない。
巴は、まるで熊に対峙するかのように、目を逸らさず、受け止めながら、なんと言ったらよいかと考えた。
公路は、本当に本初の従兄弟なのかと思うくらい、感情がはっきりしている。それに、本初よりも気位が高いようだ。本初はのんびりしていて、巴のような不審者に対しても、見下したように見ないし振る舞いもしないが、公路の顔にははっきりと不審だと書いてあるし、隠しもしていない。
ただ、その顔は確かに似ている。本初はすでに青年のそれ、公路はまだ少年らしさも残したそれ、という違いはあるものの、ふたりとも整った、きれいな顔立ちだ。髪の色、瞳の色も、本初と同じ。公路が兄上と呼ぶように、兄弟のように似ている。けれど、公路の方が表情豊かだ。今も、ものすごくイライラしているのが伝わるし、その顔がどんどん赤くなっている。(ん? 赤く……?)
目の前の公路を観察していて、その不思議な変化に、巴は首を傾げた。
なぜか公路の白い頬がどんどん赤くなっている。今日は特に暑くないどころか、長袖にもう一枚着ても十分な気温だ。もしかして、体調がよくないのだろうかと、巴はさらに公路を見つめた。
イライラしているのも、具合が悪かったからなのかもしれない。本初も具合が悪くても我慢してしまうタイプだから、公路もそうなのだろう。自身の不調に気づけていない可能性もある。
公路に言ってみようかと思ったが、ためらって、巴は一度開いた口を閉ざした。巴などが公路に話しかけても、無視されるか、無礼者と怒られるかだろう。しかし、やはり顔は赤い。思い切って話しかけてみるか、公路ではなく本初に伝えて、本初から聞いてもらったらよいだろうかと、巴は迷った。
「これは、本初にも劣らない長考だな」
「それに罪深いところも似ている」
孟卓と孟徳は笑うのも、考える巴の耳には入っていなかった。
そのとき、ふと、視界を何かに遮られたことにより、ようやく思考が止まった。
「袁司隷校尉?」
なぜか本初が巴の前に立っていた。本初の背中は意外に広く、がっしりとしているから、視界が完全に遮られる。巴に見えるのは、本初の背中だけだった。
「本初、その程度で妬いていたら、身がもたんぞ」
にやにやにやにやと孟卓と孟徳が意味ありげに笑った。
「やく……?」
孟卓の言葉の意味がわからず繰り返して、焼きもちの意味だと悟って、巴は公路までとはいかないものの呆れてしまった。どこをどう見たら、そんな風に見えるのだろう。このふたりは本当に、色恋の話が好きだ。本初によれば、ふたりには、妻もたくさんいれば、恋人もたくさんいるらしい。だから、あまり近寄るなと言われたことがある。
「そういうことではない」
feqqcsgvw
サンプル:廻る夜に降る星の香は(恋戦記魁・本巴) |
feqqcsgvw http://www.gx5g66zd8iod0692kdgt550i008l4f4is.org/
<a href="http://www.gx5g66zd8iod0692kdgt550i008l4f4is.org/">afeqqcsgvw</a>
[url=http://www.gx5g66zd8iod0692kdgt550i008l4f4is.org/]ufeqqcsgvw[/url]